見せかけの空、建前の地表。
私は右手で筆を握り締め、万年かけて磨った墨を毛先へ豪快に掛け流す。
筆を膝元から空へ、対角線上に振り上げた。墨は飛び散り、太陽の光に照らされ、美しく輝く。
黒の水滴は空へ飛んでいくものもあれば、土に染み込むものもあった。
私の空、私の地表。
真っ黒の世界で、ピンクが輪郭と形をつくる。親しみやすくて、落ち着く。
無駄なものがない、私だけの世界。炭になった桜の木から花びらが舞っている
ひとつ、墨が滴る塊を拾った。ピンクの一筋が入っている球体。
私は大事に、大事にした。
この世界、誰もいない世界で。